復職が不安すぎるとき。戻る前に知っておくと、少し違うこと
また同じことになるんじゃないか、と思っている人へ。
2026年8月31日
復職の日が決まった。あるいは、そろそろと言われている。休んでいるあいだは少し楽になったのに、戻ることを考えた瞬間に、また元の場所へ引き戻される感じがする。
この不安は、気の持ちようではどうにもなりません。実際に、戻り方によって結果が変わるからです。
厚生労働省が出している「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」という文書があります。会社の人事や産業医が読むための資料なので、休む本人が目にする機会はあまりありません。でも、そこには本人が知っておいたほうがいいことが、かなり具体的に書かれています。
この記事は、その中から戻る側にとって使える部分を取り出したものです。
1. 「元の職場に戻る」のが原則です
おそらく、これがいちばん意外だと思います。
復職にあたって「別の部署にしてほしい」「あの上司の下は無理」と考える人は多いはずです。ところが手引きには、「まずは元の職場への復帰」の原則という項目があり、こう説明されています。
たとえより好ましい職場への配置転換や異動であったとしても、新しい環境への適応にはやはりある程度の時間と心理的負担を要するためであり、そこで生じた負担が疾患の再燃・再発に結びつく可能性が指摘されているから
厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
「より好ましい職場であっても」と書いてあるところが大事です。希望どおりの異動でさえ、新しい環境に慣れること自体が負担になる。回復しきっていない状態でそれを背負うと、再発しやすい。
これは「我慢して元の場所に戻れ」という話ではありません。いま余力がないなら、変化そのものを減らしたほうがいいという設計です。異動したい気持ちが自然でも、いま動くのが得とは限らない。
そのうえで、元の職場に戻れない事情があるなら、それは相談していいことです。手引きも例外を認めていて、実際に配置転換が行われることもあります。知っておくべきなのは、原則がどちらにあるかです。知らずに異動を求めて通らなかったとき、「見捨てられた」と受け取ってしまうことがあるので。
2. いきなり全部戻らなくていい(試し出勤)
手引きには「試し出勤制度」という項目があり、3つの形が具体的に挙げられています。正式な復職の前段階として使えるものです。
その1
模擬出勤
勤務時間と同じ時間帯に、デイケアなどで模擬的な軽作業をしたり、図書館などで時間を過ごす。
働くこと自体より先に、「その時間帯に起きて活動していられるか」を確かめる段階です。
その2
通勤訓練
自宅から職場の近くまで通勤経路で移動し、職場付近で一定時間過ごしてから帰宅する。出社はしません。
朝の電車に耐えられるか、職場の最寄り駅で気分がどうなるか。実際にやってみると分かります。
その3
試し出勤
復職の判断などを目的として、本来の職場に試験的に出勤してみる。
手引きは、これによって「休業していた労働者の不安を和らげ、労働者自身が職場の状況を確認しながら、復帰の準備を行うことができる」としています。
これは社内制度として設けられている場合に使えるものなので、まず「うちにありますか」と聞くところからです。無い会社も多いと思います。
ただ、制度が無くても通勤訓練は自分でできます。復職の1週間前に、実際の時間で職場の近くまで行って帰ってくる。それだけでも、当日の負荷はかなり違います。
3. 戻れる状態かどうかの、判断材料
「本当に働けるのか」を自分で判断するのは難しいと思います。手引きには、職場復帰の可否を判断する際に見る項目が挙げられています。自分で確認する材料になります。
手引きに挙げられている例:
- 安全に通勤ができる
- 決まった勤務日、時間に就労が継続して可能である
- 業務に必要な作業ができる
- 作業による疲労が翌日までに十分回復する
- 適切な睡眠覚醒リズムが整っている、昼間に眠気がない
- 業務遂行に必要な注意力・集中力が回復している
4つ目の「作業による疲労が翌日までに十分回復する」が、個人的にはいちばん実用的だと思います。1日動けるかどうかではなく、その翌日に戻っているかを見る。1日だけなら気合いでいけてしまうので、それだと判断を誤ります。
睡眠のリズムが項目に入っているのも大きい。昼夜が逆転したまま復職すると、初日から相当きつくなります。復職日が決まったら、そこから逆算して起床時間を戻していくのは、実際に効きます。
4. 主治医の「復職可能」と、働けることは別
主治医が「もう大丈夫でしょう」と言った。診断書も出た。それでも不安が消えない。
その感覚は、間違っていないかもしれません。手引きには、こう書かれています。
主治医による診断は、日常生活における病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、必ずしも職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの判断とは限りません
厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
つまり主治医が見ているのは、多くの場合「日常生活が送れるか」であって、「あの職場のあの業務量に耐えられるか」ではないということです。診察室で分かる範囲には限りがあります。
だから「先生はいいと言うけど自信がない」は、わがままでも甘えでもありません。見ているものが違うだけです。
ここで役に立つのが、産業医や人事との面談です。手引きも、主治医の判断を産業医が精査して意見を述べることを重視しています。職場側の事情を知っている人に、業務の中身を具体的に伝えるのが大事です。「戻れます」ではなく「この業務は不安です」と言っていい場所です。
5. 交渉できることがあります
復職=元どおりフルで働く、ではありません。手引きは、一定期間の就業上の配慮として、短時間勤務、軽作業や定型業務への従事、残業・深夜業務の禁止などを挙げています。
ひとつ具体的で使える記述があります。短時間勤務にする場合の、時間の削り方についてです。
適切な生活リズムが整っていることが望ましいという観点からは、始業時間を遅らせるのではなく終業時間を早める方が
厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
朝ゆっくり出社するより、定時前に帰るほうがいいということです。朝が苦手だと「10時出社にしてほしい」と言いたくなりますが、生活リズムを立て直す観点では逆になります。
短時間勤務を相談するとき、この根拠を知っていると話が具体的になります。これは国の手引きに書かれている内容なので、こちらの都合の主張ではありません。
それでも不安が消えないとき
ここまで書いてきたことは、全部「準備」の話です。準備しても不安は残ります。
ひとつだけ、逃げ道の話をしておきます。
復職して駄目だった場合、また休むことができます。そして傷病手当金は通算で1年6か月なので、働いていた期間はカウントされません。つまり試しに戻ってみて駄目でも、残りが減らない設計になっています。
詳しくは休職と傷病手当金の記事に書きましたが、ここで言いたいのは「今回で決着をつけなくていい」ということです。一発勝負だと思うと、その緊張自体が負荷になります。
戻ってみて、駄目だったら、また考える。それでいいと思います。
この記事について。 ここに書いたのは厚生労働省の手引きの内容と、その読み方です。 医学的な助言ではありませんし、復職の可否を判断するものでもありません。 実際の判断は、主治医・産業医・会社と相談して決めてください。
手引きは事業者向けの資料であり、試し出勤などの制度が全ての会社にあるわけではありません。 就業規則や休職制度は会社ごとに異なるので、自社の制度は人事・総務に確認してください。
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この記事を書いている人
この記事を書いているのは、ひだまりという匿名SNSを運営している個人です。休職中の人、復職を控えている人が使っています。
気持ちをそのまま書ける場所と、アドバイスも説教もせずに聴くAIの聴き手がいます。会社にも家族にも言えないことを置いていく場所として作りました。
出典
- 厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(PDF) — https://www.mhlw.go.jp/content/000561013.pdf
引用した「まずは元の職場への復帰」の原則とその理由、試し出勤制度の3つの形(模擬出勤・通勤訓練・試し出勤)、職場復帰の可否を判断する際の例、「主治医による診断は日常生活における病状の回復程度によって…」、短時間勤務は始業を遅らせるより終業を早めるほうが望ましいという記述は、すべてこの手引き本体から取っています(解説記事ではなくPDF本文を確認しました)。 - 傷病手当金が通算1年6か月であることは、全国健康保険協会(協会けんぽ)の記載によります — 傷病手当金